ホテルや旅館、保養所などの宿泊施設では、入浴施設や客室、厨房、地下設備など様々な場所で漏水トラブルが発生します。
放置すれば売上の損失や設備の劣化につながるため、早期の防水・止水対策が欠かせません。本記事では、宿泊施設で頻発する漏水箇所と施工条件、コスト面の考え方を解説します。
漏水が頻発する箇所

出張でホテルに宿泊する機会が月に数回ある中で一番多く利用しているのがビジネスホテル。たまにビジネスホテルが予約できない時は外資系と思われるハイクラスホテルに泊まっては、いつもその佇まいに恐縮します。
どちらに宿泊してもあったら必ず利用するのが「大浴場」。日常ではできないこともあり、たとえば長い足を伸ばすことだったりジャグジーがあれば興味本位で入ってみたりする。サウナが併設されているところもあるがサウナは普段から入っているからスルー。
ただ職業柄なのか浴槽にある循環パイプを探したり、見上げては天井材のスパンドレルが錆ていることに気付くと換気設備の有効性を考えてしまうこともあるので結論からするとリラックスしているのかは疑問なところではある。
今回は、過去に相談のあった宿泊施設が直面していた漏水問題が複数あったので記載します。
宿泊施設で漏水が頻発する箇所

入浴施設(浴室・ジャグジー・プール・人工池など)
以前、浴室からの漏水について別のコラムをアップしているので重複する箇所もあります。
お湯を使って、水量も比較的多く、かけ流し以外なら循環させてフィルターを通している浴室や、構造的にそれに近いプールやジャグジー、さらに人工池などは日常的にふんだんに水を「流動」させています。
たいていの構造は躯体の上に防水層を作り、その上に保護する目的のコンクリート、石やタイルなどの仕上げ材で美観を整えます。屋上と違い、宿泊施設の入浴施設は地下にあったり空中階にあったりと様々で、設計の先生による趣向が反映されます。
直下の階に漏水すると一般的な対処方法として、天井内にドレンパンを設けて水を逃がす、といったとても高度でチープな対策を取る施設管理者や建設業に携わっている素人が大勢いますが躯体の損失を考慮すれば、ドレンパンで「無かったことにする」はNGです。
最善策はその漏水を根本的に止めることです。したがって平面図と矩計図など詳細が分かる資料をすべて用意して現地で確認しながら是正方針を決めていくのが健全です。
最上階(屋上からの雨漏り)
客室の天井に漏水しているために、被害を受けている客室は使用できず売上に対する損失を出している残念な宿泊施設からの相談がありました。雨が降って翌日に漏水してくるパターンと、降雨と共に即漏水するパターン、風が無ければ漏れないパターンなどなど雨漏りについて知れば知るほど漏水にはパターンがあります。
※ちなみに私は合格率の非常に高い「雨漏り診断士」というものは持っていません。なんの役に立つのか分からないし、そもそもまったく興味がないので。
とあるホテルの最上階で発生している漏水について現地を確認したところ、
- 冬場にしか漏水しない
- 漏水する時としない時がある
- 風は関係ない
という3つの条件を施設管理者から聞いた。
建てた建設会社と私の2名で対応しましたが、建設会社の1級建築士はやはりドレンパンを提案。私はそのホテルの立地環境からして「なるほどね」と気になる箇所を仔細に調査した結論として「温暖化なので最近では漏水しないのでは?」と聞いてみたところ確かにここ数年は漏水していないとのことだった。この正解が気になる方は直接ご相談ください。
ただし漏水形跡があるのでいつかまた漏水しては大変なことになる、という保全目的で防水工事の依頼だったので部分修繕と計画修繕の両方を提案し部分修繕を採択されたので速やかに対応。
最上階の部屋も売上貢献できてさぞご満悦のことだろう。
バルコニー(各階)
バルコニーから見える景色は、、、ビジネスホテルだと隣のホテルが見えたり駅が見えたり。ハイクラスホテルだと眺望がすばらしいパターンとバルコニーが無いまたは出られないパターンと。
眺望が素晴らしい老舗のホテルでバルコニーの見上げスラブ(軒天)から鍾乳洞らしきものが点在していることについてご相談を受けた。エフロレッセンスによる白華現象です。コンクリート内部のアルカリ成分が長年の雨によってクラック(ひび割れ)から溶出して蓄積されたつららみたいなものです。簡単な話、上階の防水脆弱部分を是正すればその現象が進行することはなくなります。
ただし、直上が原因とも限らないのが漏水のいやなところです。バルコニーに限らず、漏水について多くの人が勘違いされているのでおさらいしますと、水の出口が1か所であっても入口は無数あると思えば間違いないです。
ただ、上階のバルコニーを防水しなおすとしてもチェックアウトからチェックインまでの間で尚且つ音を出しても問題ないタイミング。こうなってくると放置したくなるのも分からなくもないです。もしここに短時間で恒久的に漏水を是正できて施工後の跡も目立たない技術が存在したらどうでしょう。
では、直接お問い合わせください。お待ちしております。
厨房・調理室
宿泊施設の厨房は忙しい。
タイミングを間違えると一緒に調理することになるのではないか、と恐怖心で目が回ります。しかし、厨房でも同じように漏水が発生していることがあります。
当社は、漏水している原因を追究し得策を提案しております。営業時間外に簡潔に終わらせる防水工事や緊急修繕対応など一括して行うことで無駄な時間を無くすことも当然のことながら、品質についても最高水準を保つことが可能です。
地下通路・地下室
機械室やボイラー(熱源室)、受水槽室、洪水浸水ハザードマップ
某夢の国なんかは開園当初からあるPには巨大な地下通路があって商品や人が縦横無尽に動き回っている、と聞いたことがあるのできっと立地的にも大掛かりな水対策をしてるんだろうな~と思う一方で、開園からの年月を考えたときに部材の劣化速度からして100%漏れてますよね?困ってますよね?取引関係上、大手ゼネコンに依頼するけどいつも忙しいし少額対応してくれないし、という関係者の心の声が聞きたい。聞いてみたい。
長い地下通路には必ずジョイントが存在し、そこが一番最初に漏水しやすい箇所でもある。地下室の漏水はこれこそ立地によって左右されるものなので、構造だけ理解しても止水はできません。ただ簡単に解決する方法が一つだけあります。
「相談すること」です。私に。
そういえば、あのエリアには宿泊施設あったな。だれか呼んでくれないかなぁ。
園庭・人工池・人工滝
SRC造の高層ホテルに併設されている園庭の中に造られた人工の池と滝は、来館者をリラックスさせる目的と伺った。
その人工池と滝は「すごい人が」設計して「すごい建設会社が」工事をして「すごい金額」だったらしい。その人工池と滝の隣にレストランがあり、窓側に座ると都会の喧騒を忘れさせてくれるものだったらしいです。
がしかし、その人工池と滝の水が経年と共に劣化した防水層を見事に突き破って、敢無くレストラン内に流入し関係者の肝を冷やしたらしいです。そこで相談を受け現地確認をおこなった結果、「これくらいの金額がかかりますよ」と概算をお伝えしたところ「すごい建設会社が」出してきた金額は当社の100倍以上。理由は「すごい人の」設計+「すごい建設会社」だからとのこと。
おかげで当社が出した金額が低過ぎるように見えたのか、ダメもとで工事をさせてもらえるカタチになり実施したところ簡単に水が止まったことで高い評価を受けたと同時に、「すごい建設会社」からは嫌われる格好となった。
これも結局、各種図面が必要で施設管理者サイドのリクエストを聞かなければ実現できなかった防水工事だったと思う。
宿泊施設における防水工事の施工条件
多いのは1:00am~7:00am。
たまに1:00pm~3:00pmを指定されるが2時間で防水工事は無理なので、その時間は調査です。
コスト面での注意点

「建設会社によるメンテナンスであれば間違いない」という考えは正しいです。ただしそれは新築時に関わっていた人が存在するからであり、もし担当者が入れ替わっていたら結局スタートラインはほぼ同じです。
同じコストをかけるのであれば、迅速な対応をしてくれる会社を選ぶか、はたまたビッグネームだけど対応がいまいちな「すごい建設会社」に頼むか。
建物も生き物です。
問題が発生して割と早く動いてくれる会社を見つけてみるのもいいかもしれません。
